「LIFE SHIFT(ライフシフト)」を読んだ感想~人生設計について考え直す~

「LIFE SHIFT(ライフシフト)」を読んだ感想~人生設計について考え直す~

「LIFE SHIFT(ライフシフト) -100年時代の人生戦略-」とは、ロンドン・ビジネススクール教授のリンダ グラッドンさんと、同校の経済学教授のアンドリュー スコットさんが共同著者となっている書籍である。

今の若年世代は100歳まで生きる可能性が十分にあると仮定し、長くなった人生を、どう豊かに生きていくのか、その道しるべのようなものを本書の中で説いてくれる。本を読んで気付かされる部分も多く、これからの自分の人生設計を考える上でも、とても役に立つ良書であった。

現在の平均寿命以上の人生を生きる想定

日本でも「人生100年時代」なんてしきりに言われているが、確かに現在公表されている平均寿命で人生設計を立ててはいけないと考えさせられる。

ちなみに厚生労働省が発表している日本の平均寿命は、2017年のデータで女性87.26歳、男性81.09歳だ。この数字だけでも、世界の中でもずいぶんと長寿な国なわけだが、問題なのはこの数字はあくまで現時点であり、今後医療の発達などで平均寿命が延びていくことは加味されていない。

世界の平均寿命の推移をみても、これまで右肩上がりで伸びている。平均寿命が延びているのには、医療の発達により乳幼児の死亡率が低下したり、心臓病や脳卒中など年配者がかかる病気に対して適切な医療が行われるようになったことが大きい。それに禁煙などの健康促進に対する啓蒙活動も大きな影響を与えている。

10年に約2歳のペースで世界の平均寿命は延びているようで、今後もAIやナノテクノロジーなどの発達によって医療にも大きな変革が訪れることを想定すると、まだまだ平均寿命は延びていきそうだ。本書でも2004年以降に生まれた子供の約50%は、100歳以上まで生きると想定している。

人生のステージについても大きく変わる

寿命が延びると耳にすると、単純に良いことのように感じるかもしれないが、そう考えるのは早計のようだ。もし現在常識とされる人生設計のセオリーである、教育・労働・老後の3ステージを想定していると、老後のステージが格段に長くなり、十分な蓄えを残しておけない人間はひもじい思いをするだけだ。

長く生きることができるようになっても生活に困窮するようでは、とても長寿は恩恵とは言えなくなってしまう。そこで本書ではこれからは人生の中でも複数のステージを経験することが、より豊かな人生にしていくための要素になると説いていた。

ついつい今ある常識の中で物事を図ってしまうと、教育・労働・老後の3ステージでどう生きていくかを考えてしまうが、それ以外の別のステージが生まれるというのは、常識を覆してくれるような教えだ。

エクスプローラーなどの新しいステージ

人生が長くなれば先に述べた教育・労働・老後だけでなく、世界一周など自分の見識を広げるための自分探しをするようなステージが生まれたり、サラリーマンとして雇用されるだけでなく、自分たちで独自のサービスを提供するインディペンデント・プロデューサーのようなステージが新たに登場することになるだろうと説いていた。

単純に人生が長くなるから多くの経験を積めるようになったというわけではなく、長い人生をサバイブしていくには、こうしたステージをあらかじめ想定して人生設計を立てておくことが、これからの100年を生きていく上では重要になってくるようだ。

テクノロジーの分野も日進月歩だし、技術もどんどん簡易的になっている。よく「昔取った杵柄」なんて言葉が使われるが、人生100年時代を生きていくには、そんな杵柄は通用しなくなる。そのため時には学び直しということだって必要になるかもしれない。

日本でも終身雇用制度は崩壊しつつあり、政府としても雇用の流動化を推奨しているようなので、20代で学び、30代で自立し、40代で働き盛りなんて考え方で一つの会社、一つのキャリアに固執していると、いつの間にかやり直しがきかない年齢になり、貧しくひもじい老後を送ることになる可能性は大きい。

教育・労働・老後というステージが順番に訪れるという考えは捨て、複数のキャリアを経験することや、エクスプローラーなど自分自身の見識を広げるためのステージが訪れるということも、十分に考えなければいけない。

無形資産という存在と価値観の変化

本書を読んでいてもう一点新たな考えを芽生えさせてくれるのは、無形資産というものの存在だ。資本主義経済の中で生きる我々にとっては、ついつい資産と聞くと貨幣・不動産・有価証券などの”富”をイメージするだろう。

しかし長く続く人生を豊かに生きていくには、これからは無形の資産にも目を向けないといけないと説いている。それは自身のスキル・健康・友人や家族といった存在。確かに最近の価値観の変化を見ても、こうした無形の資産が重要視されることが多くなっている気がする。

いくら金銭的資産を有していても、生涯一人で喋り相手もおらず、体調も悪く多くの経験も積めないような人生ではつまらない。富を追求する価値観はそろそろ限界に達し、人生が長くなるにつれて、こうした無形資産に価値をおき、幸福を追求することが求められる時代になっているのだと、あらためて強く感じる。

無形の資産は一朝一夕にして形成されるものではないので、100年時代を生きていくためのマインドをしっかりと持ち、常日頃から無形資産を構築するための行動をしていかなければならない。

おわりに

「100年という長寿をまっとうする人生」というものを主軸に、どうしたら豊かな人生を送れるのか、人生のステージのこと、これからの職種の変化のこと、男女の役割のこと、自分自身のアイデンティティを追求することなど、さまざまな目線で実に興味深いことが書かれている。

自分自身の人生設計も今一度立て直さなければ、と考えさせてくれる良書であった。

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