椎名林檎の歌詞から表現豊かでぐっとくるフレーズを抜粋してみる

椎名林檎の歌詞から表現豊かでぐっとくるフレーズを抜粋してみる

椎名林檎の歌詞は、明らかにその他のJ-POPとは一線を画している。

歌詞だけに目を通してみると、何が言いたいのか、何を伝えたいのか理解できない表現があるのも事実だが「椎名林檎が好きすぎるので、僕が感じる魅力を語ってみた」でもお伝えしたとおり、僕自身は林檎さんの歌詞は純文学のようなものとして捉えている。だから文脈自体に意味を求めることよりも、その表現の美しさに価値を感じている。

そうした林檎さんが綴る歌詞は、言葉というものの可能性を感じさせてくれるわけだが、時には強いメッセージ性を歌詞に込めることだってある。

たくさんの楽曲に乗せられる歌詞には、いくつもの素晴らしいフレーズがたくさんあるし、それを(勝手に)みなさんにシェアしたいと(勝手に)思っている。 ・・ということで今回は、林檎さんの歌詞の中から、小粋な表現方法部門と、メッセージ性の強い部門のふたつに分けて、林檎さんの素晴らしき歌詞の数々をシェアいきたい。

 

小粋な表現方法部門

おこのみで

生命(いのち)さへ怪しき瞬きに過呼吸

引用「椎名林檎 “おこのみで”」より

まずは「加爾基 精液 栗ノ花」に収録されている”おこのみで”から、上記のフレーズ。

「おこのみで」はなにやら男女のただならぬ愛をテーマにしているような楽曲ではあるが、上記のような小粋な表現方法には肝を抜かれてしまう。このフレーズを耳にするだけで、なんとも妖艶で背徳的な愛の情景を思い浮かべはしないだろうか。

J-POPでよくある表現であれば「君の魅力にノックアウト寸前」とか「素晴らしきこの瞬間に我を忘れる」となるのだろう(いや、ならねーか)。

こうした表現の豊かさが、椎名林檎の歌詞の美しいところなのである。

 

ジユーダム

おはよう
下ろしたての時をどうしよっか

引用「椎名林檎 “ジユーダム”」より

“おろす”という表現は一般的に「新しい洋服をおろす」というように使われることが多いが、時間というものに対して「下ろしたての時」なんて表現、誰ができるだろうか。こうしたセンスの良さが椎名林檎の歌詞の魅力でもあるのだ。

時間や”とき”の表現としては、林檎さんならではといった感じ。

 

走れゎナンバー

振り込んだ雨の率直さは、自由と不自由とを、分け入る様

引用「椎名林檎 “走れゎナンバー”」より

自由と不自由という相反するものの対比として、車に降り込んでくる雨粒を用いて表現するなんて粋ではないだろうか。雨が持つイメージが、ちょうど走れゎナンバーの雰囲気にもマッチしている。

 

群青日和

突き刺す十二月と伊勢丹の息が合わさる衝突地点
少しあなたを思い出す体感温度

引用「東京事変 “群青日和”」より

群青日和といえば東京事変の中でも初期のヒット曲なので、この曲を耳にした人は多いはずだし、群青日和を聴いて東京事変のファンになった人もいることだろう。是非歌詞にも注目してほしいところだ。群青日和もそうだし、東京事変の楽曲もおおかた、作詞は椎名林檎が担当しているのである。

そんな群青日和の中の一節。

あなたを思い出す体感温度を説明するのに、こんなにも洒落た表現方法があるだろうか!? いや、僕は他には知らない! 林檎さんだからこそなし得る芸当なのだ。

 

メッセージ性の強い部門

静かなる逆襲

美味しそうな今美味しそうな旬を美味しく頂く それが人生よ つまり
愛すべき今愛すべきひとと愛し合うまでよ

引用 「椎名林檎 “静かなる逆襲”」より

静かなる逆襲では、林檎さんの生々しいメッセージが込められている。上記のフレーズでも愛について率直なまでに思いを綴っているし、愛というものは人生に輝きをもたらしてくれる大切な要素でもある。

力強いサウンドに乗せて、発せられるこの歌詞。人を愛することの素晴らしさがひしひしと伝わってくる。

 

閃光少女

焼き付いてよ、一瞬の光で
またとないいのちを
使い切っていくから

引用「東京事変 “閃光少女”」より

閃光少女は東京事変の楽曲であるが、こちらのフレーズのように、椎名林檎の歌詞には「自分自身が生きている”今”、そして今思う価値観を大事にしよう」という旨のメッセージが込められることが多い。

まわりくどい生き方なんかよりも、もっとシンプルでよいのだ。「周りの目を気にして悩むことも、過ぎてしまった過去や、予測できない未来のために我慢することはない。今この瞬間を存分に楽しもう!」という気持ちにさせてくれる。

 

人生は夢だらけ

それは人生 私の人生 誰の物でもない奪われるものか 私は自由
この人生は夢だらけ

引用「椎名林檎 “人生は夢だらけ”」より

この楽曲も人生観を歌う曲であるが、自分自身の人生を謳歌すれば、人生なんてものは夢だらけであると教えてくれる。非常に前向きな気持ちになれる。

林檎さんが歌に乗せる人生観は、まずは自身の思いや価値観を肯定することから始め、一度きりの人生を自分のために思いっきり楽しもうというメッセージを込めている(ような気がしている)。

 

目抜き通り

あの世でもらう批評が本当なのさ
デートの夢は永い眠りで観ようか
最期の日から数えてみてほらご覧
飛び出しておいで目抜き通りへ!

引用「椎名林檎とトータス松本 “目抜き通り”」より

椎名林檎さんの楽曲は、生きることの喜びだけを綴るばかりではない。上記の目抜き通りにある歌詞でもそうだが、生と同様、死というものを匂わせることも多いのだ。

ちなみに林檎さんの歌詞の根底には「人生とは諸行無常であり、世の中は盛者必衰である」という前提がある(と、勝手に思っている)。だからこそ限りある人生をまっとうし、今この瞬間を思う存分に楽しむべきであるし、“生”とは対局となる”死”を意識するからこそ、人生の輝きに対する美しさや、命の尊さを感じさせてくれるのである。

 

ありきたりな女

どれほど強く望もうとも、どれほど深く祈ろうとも、もう聴こえない。
あなたの命を聴き取るため、代わりに失ったわたしのあの素晴らしき世界。
GOODBYE。

引用「椎名林檎 “ありきたりな女”」より

一人の女から母親になることを歌っているのがこの”ありきたりな女”。曲のタイトルにもなっているが、母親のことを「ありきたりな女」として表現しており、初っぱなからそのセンスに脱帽される。

母親になり子育てをするということは、時には社会とも隔離されたような疎外感を感じることもあり(僕の嫁がそう言っていた)、自分自身のために青春を謳歌できる世界とは一線を画している。ただそんな世界と決別しようとも、ありきたりな女になろうとも、わが子の命の誕生を迎えることの尊さが伝わってくる。そんな一曲である。

 

キラーチューン

「贅沢は味方」もっと欲しがります負けたって
勝ったってこの感度は揺るがないの
貧しさこそが敵

引用「東京事変 “キラーチューン”」より

歌詞のモチーフになっているのは言うまでもなく、戦時中に戦意高揚のために利用された「ぜいたくは敵だ!」「欲しがりません勝つまでは」という標語。そうした標語を改変しながら林檎さんなりのメッセージを乗せてくるのがユニークである。

 

おわりに

椎名林檎の歌詞の世界はいかがだったろう。

今回取り上げた歌詞は、林檎さんの楽曲の中でもごく一部でしかないが、本当に粋な表現が多く、どれも本当に素晴らしい。歌詞だけ読んでいるだけでも、お腹いっぱいになるレベルだ。

またメッセージ性に関しては、デビュー当初の楽曲でも、最新の楽曲でも、一貫した主張が根底にある。もちろん時代によって価値観は変わるかもしれないが、人間性の根本にある軸がぶれていないことが分かる。そしてそのメッセージが多くの人の心を揺さぶってきたのもまた事実。

このように歌詞を読み解いていくと、椎名さんの本心を垣間見ることができて、それはそれでファンとしては一つの楽しみ方である。

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