新入社員として社会人ライフをスタートさせたときとか、転職して新しい業界に挑戦するときとか、誰しもが未経験からのスタートになる。そこで会社の業務にいち早く適応するためには、既存社員からの指導を受けることが一般的かと。
そうしたとき、誰に教えてもらうかは非常に大事なポイント。たまに「見て覚えろ」的な指導をする人がいるんだけど、あれは本当に無駄。時間と労力を無駄にしているだけだし、もっと言えば上司・先輩としての指導放棄ですよ。職務怠慢ですよ。
「見て覚えろ」なんて効率悪すぎ
なんでこんなことを言っているのかだが、僕自身も「見て覚えろ」的な上司に遭遇したことがあるからだ。当時は学校を卒業したてで、初々しい新入社員であったために「社会はこんなにも厳しいのか・・」と感じていたが、今になって「なんて無駄な時間だったんだ!」と、つくづく思うわけである。
そんなこんなで僕自身が体験したエピソードを交えながら、「見て覚えろ」のくだらなさを論じていきたい。
昔のおもひ出
・・新入社員の僕の指導役、上司となったのは十歳以上年の離れたベテラン社員だった。
業種としてはソフトウェア業界のインフラ部門。いわゆる頭脳労働のため、板前や大工といった職業のように、100%「技は見て盗め」的なことではなかったが、その扱いはひどかった。
基本は何も教えてくれない。いや、そういう言い方をしてしまうと語弊があるが、たとえば「DNSサーバーの役割をまとめろ」という指示に対して、質問することも許されないし、フォローもない。
とにかく自分で調べつくして、間違った回答を提示すると叱責を食らうし、一向に答えは教えてくれない。回答についても大筋が合っていても、上司の意図するフレーズを含んでいないと、そのフレーズを出すまで何度もやり直しをさせられる。
いや、思うんですよ・・「そんなことしないで、最初から教えてくれればよくないですか?」と。
おそらく上司の考えは「自分で調べて正解にたどりついた方が知識として定着する」という考えの持ち主だったのでしょう。
その言い分も分からなくもないですが、(当時は2008年ごろだったけど)これだけインターネット環境が発達していれば、キーワードさえ抑えておけば、いくらでも調べなおすことができるし、知識なんてものは知っているか知っていないかだけの違いなんだから、業務上必要なことは早く教えてもらった方が、成長も早くなると。
大事なのはその知識をどのように応用していくか。そこが仕事をする上でのセンスの良い人と悪い人の分かれ目ではないだろうか。
もう10年以上も前のことであるが、今となっては懐かしい思い出だ。当時は僕も社会のことも知らないがゆえに、上司の思いのままに動いていたが、今だったら自信を持って「このやり方に意味あるんですか?」と言えるな。
一度聞いたら、二度と聞くなも無駄
「目で見て盗め」ついでに言っておくが、「一度聞いたら、二度と聞くな」も無駄である。なんなんでしょうね。どれだけ傲慢になったらそんな台詞を吐けるんでしょうね。
特に新入社員なんてのは、業務のことも覚えなければならないだけでなく、社会人としてのマナーもたくさん覚えていかなければならない。特に僕たちみたいな専門職であれば、知識として頭に詰め込むことも膨大だ。
もちろん初めて聞いたこと、知ったことを忘れないようにしようとする努力は怠るべきではないが、記憶超人でもない限り、覚えることだらけの新人時代に、聞いたこと全てを覚えられるわけがない。
だから1度聞いたことでも、再度聞けばよいのだ。しっかり覚えさせられないのは、上司の能力不足という面もあるだろう。それを相手方のせいにするのは、お門違いなのである。
それに分からないことは逐一聞いてくれたほうが、効率良く業務を進めることができる。
先輩・上司なら人の育て方も心得るべき
とにかく先輩や上司という立場なら、部下や後輩社員、教育中の新入社員が伸びないのは、自分にも責任があると感じなければいけない。こうした感覚がないと、独りよがりの教育になってしまい、会社も新人も誰も得をしない結果となるだけ。本当に意味がない。
教育とは一方的なものではなく、双方向の流れを意識していくことが大事。教える立場であれば「これ言ったはず」とか「前にも説明したから」ではなく、「しっかりと自分の説明で相手が理解できるのか」とか「相手は本当に理解しただろうか」など、そういったことも意識をしていかないといけない。
人に業務を教える立場になったのであれば、人の育て方といったところも心得ていかなければならない。
おわりに
とにかく「見て盗め」とか「一度聞いたら二度と聞くな」みたいな指導は本当に無駄だ。結局は教える方の自己満足だけだし、生産性が損なわれていることを理解しなければならない。
生産性が損なわれれば、組織・チームとしても悪い影響を及ぼすだけ。そんなことにメリットがないと理解する人は、どんどん組織・チームを離れていく。
百害あって一利なしだ。